世界文化遺産・24候補、懸命アピール読売新聞夕刊2007-1-18 鉱山 信仰 同タイプ多く…世界文化遺産の国内候補として、政府が国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)に提出するリストが23日、文化庁の文化審議会で決まる。 新たにリスト入りを目指し“立候補”しているのは「金と銀の島、佐渡」(新潟県)、「出羽三山と最上川が織りなす文化的景観」(山形県)など24件。観光地としていっそうの知名度アップを狙うが、同じタイプも多いだけに、他にはない独自性をアピールするのに懸命だ。 「佐渡金銀山」は、既にリスト入りしている「石見銀山遺跡」(島根県)と同じ鉱山遺跡のため、島に数多く残る社寺や能舞台、人形芝居、狂言などの無形文化財も盛り込み、島全体を世界遺産とする。新潟県は「島の人々の暮らしや文化と密着している点でも、石見に負けない貴重な文化遺跡」とアピールする。 「出羽三山と最上川が織りなす文化的景観」と「四国八十八箇所霊場と遍路道」(四国4県)は、山岳信仰、霊場という点で、2004年に世界遺産となった「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」(和歌山県など)と類似する。 山形県は当初、出羽三山を巡る山岳信仰文化だけを候補にする予定だったが、立候補前の有識者会議で「紀伊山地との差別化が難しい」と指摘され、最上川を組み合わせることにした。出羽三山の参詣道の整備などに取り組む市民団体「アルゴディア研究会」の小関祐二会長は「最上川流域の民俗芸能や昔ながらの民家が残る『里山文化』が含まれたことで、山岳信仰にとどまらないことを示せた」と話す。四国の自治体も、霊場だけでなく、遍路道周辺の地域住民が巡拝者に食事などを施す「お接待文化」の重要性を強調する。 リスト入りで経済効果への期待も高まるが、一時的ブームに終わらせないための取り組みも欠かせない。 「九州・山口の近代化産業遺産群」を提案している九州地方では、昨年2月、NPO法人「軍艦島を世界遺産にする会」(長崎県)などの呼びかけで10の市民団体が集まり、「九州伝承遺産ネットワーク」を結成。周遊性のある観光ルートを作り、「遊びながら学べる九州観光」の共同PRを目指す。 世界文化遺産 歴史的に重要な価値を持つ建築物、遺跡などを対象に、ユネスコが登録を決める。これまでは文化庁が独自に候補を決めていたが、今年度から「遺産の保全は地域に負うところが大きい」として公募にした。国内の文化遺産は「法隆寺地域の仏教建造物」(奈良県)など10件。世界遺産にはこのほか「自然遺産」、文化と自然の「複合遺産」があり、06年7月時点で830件が登録されている。 |
九州経済産業局の機関紙「環」にて九州伝承遺産ネットワークのことが紹介されています。 軍艦島や各地のNPOとの連携や伝承遺産について取材されたものです 表紙 1(PDF形式) 653KB 記事 23〜25(PDF形式) 932KB |
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地域の資源として活用を 産業遺産の保存 福岡県志免町の志免炭鉱跡に、地下から採掘した石炭を運び上げる高さ五三・六メートルの立て坑やぐらがそびえる。 国営炭鉱として、日本の発展を支えた石炭鉱業の象徴といえる。このやぐらは上部にゴンドラの巻き上げ室があり、国内では唯一、世界でも三カ所しか現存していないという。貴重な建造物だけに、土木学会も「近代土木遺産」で最重要のAランクと評価している。 しかし、やぐらの建設から六十二年が経過しており老朽化していたことから、二〇〇四年の台風時にはコンクリート片の一部が落下してしまった。 そこで地元では、町のシンボルとして保存するか、解体するかで揺れたのである。だが住民の強い要望で取り壊しの危機を免れ、保存される方向だ。 このように、九州には日本の近代産業の形成と発展に重要な役割を果たしてきた炭鉱跡や戦争遺構などの近代遺産が各地に現存している。 その近代遺産が今、取り壊されるか、地域活性化の新たな資源として生まれ変わるかの岐路に立たされている。 その意味で、一日に設立された「九州伝承遺産ネットワーク協議会(仮称)」に期待を寄せたい。 連携するのは、長崎市の軍艦島や福岡県大牟田市と熊本県荒尾市の三井三池炭鉱の立て坑跡、北九州市の歴史的建造物など、産業遺産の保存・活用に取り組む七つの民間非営利団体(NPO)だ。 各地の産業遺産をデータベース化し、産業遺産の魅力を発信するとともに、地域おこしや観光振興に役立てるという。さらに各地の取り組みを支援する「伝承遺産」認定制度を創設する予定だ。 戦後、歴史的な産業遺産が相次いで壊され、その周辺にあった古い街並みも、足並みをそろえるかのように次々と姿を消していった。 協議会の活動は、一見無用の長物と思われがちな産業遺産に、実は文化的価値が埋もれていることに気付かされ、地域の近代遺産を見つめ直す契機ともなる。 岩手県東山町では、宮沢賢治が晩年に働いていた石灰工場の当時の様子を再現し、まちづくりのシンボルとしている。 産業遺産は、地域の持つ固有の個性を表現しているといえる。歴史の重みを、時空を超えて、今に伝える生きた教材といえる。子どもにとっては本物を見る目を培い、故郷をいとおしむ心をはぐくむことにもつながるはずだ。 協議会は、地域に現存する近代遺産の実態調査を実施し、地域住民との論議を重ねたうえで、民間と行政が協力して保存、活用方法を検討してもらいたい。 行政も価値の高い近代遺産には積極的に介在し、保存を図る必要がある。 産業遺産は、人類の多面的な活動を実証する「文化財」として位置付け、地域に潤いをもたらす資源として活用する視点が欠かせない。 西日本新聞 2月3日 社説より |
