経済産業省は2日、日本の近代化に貢献した産業遺産を、文化財とは別に同省独自の「近代産業遺産」として認定、この遺産を観光などに生かす中小企業を経済的に支援していく方針を固めた。地域活性化が狙い。鉄鋼業や石炭産業など10程度のテーマ別に、産業史をたどり、各地に点在する「遺産」を地域を超えて一括認定する。3月に産業史研究者らによる専門者会合を発足、今秋までに認定する予定。九州・山口の自治体が世界遺産登録を目指している近代化産業遺産群などが対象となる見込み。
同省は各地で炭鉱遺構や廃工場などが取り壊されている点に着目。「産業遺産は地元の人があまり歴史的価値を理解していないケースが多い。認知度を高め観光資源などに活用すれば地域振興につながる」と判断した。
対象時期は幕末から昭和の戦後復興期までを想定。文化庁が1990年から実施している全国調査のデータなどを基に、選定作業を進める。建造物にとどまらず、機械の作業手順や労働者の教育マニュアルなどソフト面も含めた「遺産」を検討していく。例えば、鉄鋼をテーマにした場合、八幡製鉄所(北九州市)の創業時、釜石製鉄所(岩手県)の技術者の手厚い支援を受けたいきさつなど物語性を重視。繊維、造船など他の分野でも、技術の伝播(でんぱ)や流通経路など産業史を構成することに力点を置く。
中小企業支援は政府が今国会に提出予定の「中小企業地域資源活用促進法案」を活用する方針。各地の特産物や観光資源などを地域資源に認定し、研究開発の設備投資などを対象とした補助金制度を盛り込んだ法案で、同省は認定遺産を観光資源などに生かす企業に同制度を適用する意向。選定した遺産は10月をめどに冊子にまとめて刊行、同省はシンポジウムなども計画する。
■九州・山口の近代化産業遺産群
文化庁が世界遺産の国内候補選定で昨年、導入した公募制に応じて、九州・山口の6県8市が共同提案。三池炭鉱宮原坑(福岡県大牟田市)や通称「軍艦島」で知られる端島(長崎市)など13カ所で構成される。九州・山口の点在する遺産を一括して「遺産群」とする視点は2005年に鹿児島県主催のシンポジウムで提唱された。06年6月には九州地方知事会が各地の遺産の保存・活用に取り組む方針を決定。文化庁は今年1月、世界遺産の国内候補選定で「地元合意の形成」などの課題を指摘し、継続審査とした。
=2007/02/03付 西日本新聞朝刊=
近代産業丸ごと遺産 分野別に認定へ 経産省方針観光への活用狙う